八仙茶館日報

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あかいふくろうのアルミの味

中国から来ていたJがうちに初めて来たときに持ってきてくれたのは紅老鷹というチベットのなんかの植物のバッツだけを集めた素敵なお茶だった。

チョコレートのような甘い香りとなめらかなファースト。
それから不思議な味が漂い、その雰囲気がなんとなくアルミぽくて、けどアルミっていうよりも、もっとこう、なんというか鉱物的な含みもあり、また透き通った雰囲気が美しい。

そんなお茶。

そのときの私のプアな英語ではそんなことを言えるはずもない。
(そして日本語でも言えてない。)
茶酔いにまかせて、メタリックな感じのする良いお茶、みたいなことを私が言ったら、金属の味がわかるの???と言ってJは笑った。

それからJはうちにときどき来てくれるようになって、そういうときはいつもお茶を飲みながら話した。
お茶のこととか擬態語のこととか漢字のこととか芸術のこととか、資本主義経済とか全体主義とかのことも話したりした。お茶を淹れながら。

それが先々週ごろ、Jから電話があって、community art festa(?)の仕事が進み始めたから9/16に中国に帰ることになったと言う。

それで先週の水曜に来てくれることになって、またお茶を淹れて飲んだ。
鳳凰単叢八仙香。

茶のことばかり話した。

事務所の壁に掛けてある李白の黄鶴楼の詩を指して、ああ、友達にさよならの詩ねー、とだいぶ上手になった日本語でJは言った。

別れ際、はなむけに彼女のお気に入りの白牡丹という白茶を少しばかりプレゼントした。
彼女の方でも包みを持ってきてくれていて、貰って中を見ると紅老鷹の透き通った茶葉であった。

またいつかどこかで茶を飲もうと約し、そして別れた。
次の日淹れた紅老鷹はやはり鉱物的な味がした。
けど最初に会ったときにメタリックな味と言ったのはちょっと変やったな、と思った。

今日の便でJは中国に帰る。

茶友の煎福を心から願う。


茶経 全訳注 (講談社学術文庫)
チベットの生と死の書 (講談社プラスアルファ文庫)